自動車業界の行く末 〜次世代自動車とは?〜


僕は数年前から若干ながらも自動車業界に絡んだお仕事をしている関係上、この業界の行く末が気になるところではあります。

20世紀は、自動車産業のためにあった100年と言っても過言ではないぐらい、車が我々の実生活環境を大きく変え、また世界経済をも牽引してき、現在のライフスタイルを確立させました。その中で、大手自動車メーカーの生命線であり、大手がなぜ大手として長年君臨しているのか、この構造が崩れないのかの最重要部分となっているのが『エンジン』です。ただ、今世紀の前半で、この構造が大きく変わる可能性が出てきました。


「今一番やっていけないのは、我々自動車メーカーのマネです」

「クルマ」がそのまま「EV」になっては、新興国にかなわない

F:私も素人ながら、あのクルマに乗ってこれは来るな、電気自動車の時代は間違いなくすぐそこまで来ているな、と強く思いました。ただ電気自動車は構成部品も少なくなりモジュール化も益々進んでくる。異業種からの参入も増えると思うのですが、いかがでしょう?ソニー自動車とかパナオートとか、楽天車両なんて会社が突然出来るかも知れません。

吉:あるでしょうね。あると思います。
 しかしその流れの中で、決して彼らがやってはいけないことは、我々自動車会社のマネをするということです。今、我々はガソリン車を電気自動車化しようとしています。例えば電機メーカーが、ああ、これなら俺たちにも出来そうだと思って飛び込むと、出来た頃には我々は既に別の世界に居ますよ、ということです。我々は先に言った、100年目の自動車革命を起こそうとしているのですから。

(中略)

F:2、3年で見よう見まねでガソリン車の代替品のようなものを造ったところで、その頃には自動車メーカーは誰もそんなことをやっていないかもしれない、と。

吉:その可能性は大ですね。そうしたやり方をしていると、新興国メーカーとの価格競争に巻き込まれる事になる。中国やインドの自動車と価格競争が出来ますか? 例えば中国にはBYDさんがありますけど、そこはもう一生懸命、電気自動車をやられている。
(中略)
元々はバッテリーの会社なのですが、今はすごい量のバッテリーをドカっと積んで、一充電で航続距離300km のクルマを造ってしまった。ガソリン車も既に他社を買収して製造ノウハウを積み上げている。こんな会社が電気自動車に打って出るんですよ。余り知られていないけれど、彼らと同じような自動車メーカーは中国の中にいくつもある。
今のクルマのエンジンとガソリンを、ただモーターとバッテリーに入れ替えればいいと思うメーカーは、そこと価格競争するんです。そこに巻き込まれるんです。こんなことは新興国の新進メーカーでもできる事なんです。そんなところと価格競争するんですか、ということなんですね。


今後の自動車メーカーを占う上で容易に想像できるのが、上記で懸念されている通り、ガソリン自動車から電気自動車(EV)に移り変われば『エンジン』から『モーター』に変わるということで、電機メーカーや中小企業の自動車サプライヤー、下手すれば個人レベルですらも作れてしまう時代が来たということです。ただ、日本の電機メーカーは、自ら自動車を作るような馬鹿なマネはせず、オイシイ所だけを取ろうとするはずですので、日系電機メーカーが自動車を販売することは恐らく考えられないでしょう。そのオイシイ所というのが『エンジン+ガソリン』に変わる『モーター+電池』です。もし今後EVが主流となれば、『エンジン』ではなく『電池』を制するものが自動車業界を制すると考えられます。また同時に、一般人からの視点で言うと「EVが市場を奪っていく」ことは「電池が発展する」ことに繋がり、「エンジンの進化」よりは「電池の進化」の方が人間の生活にはメリットがありそうです。

(ちなみに、このインタビューでは、自動車メーカーをマネることが何故だめなのかという理由として、「出来た頃には我々は既に別の世界に居ますよ」と答えていますが、これでは回答になっているとは思えませんね。)



それでは自動車メーカーの立場としてはどうなのでしょうか?

各社の『エンジン』は20世紀、常に進化し続けてきました。F1というスポーツもその一役を買っています。その凝縮された技術の結晶を、大手自動車メーカーは捨て去ることができるのでしょうか?
勿論、簡単には捨てきれないため、延命措置として各社は『エンジン』も搭載しているエコカーハイブリッド車(HV)を市場に投入しています。ただ、これはあくまで延命措置であり、根本的な解決にはなっていません。また燃料である石油もあと数十年で枯渇すると言われています。大手自動車メーカーが今後も主導権を握るためには、僕としてはやはり『エンジン』は捨てきれないと思います。そのためには第二、第三の燃料を探しに行く必要があるのだろうと思います。例えば水素燃料やバイオ燃料天然ガスが挙げられます。実際、開発しているメーカーもいるようですが、EVよりはまだ全然注目されてません。ただ、EVに舵を取るよりは、まだこちらの方が大手の座に残る可能性があるかと思うのですが。あと、大型旅客機は流石に電気では飛べないと思うので、次世代燃料は必ず必要だと思ってます。

一方、『エンジン』に拘ることが、ひょっとするとイノベーションのジレンマに陥っているという危険性もなくはないです。過去の産物に固執するあまり、時代の流れを読み間違え、取り残されていった大企業は少なくありません。1つだけ言えることは、今が自動車業界の転換期であるということです。