官僚とGDPという名のモノサシについて

「【続編】シンガポールのすごい官僚制度について(2) Q&A」

僕もシンガポールに数年住んで、このブログ主の主張と全く同じ考えを持つようになりました。特に官僚の報酬を高額にするのには賛成です。その一番の理由として汚職が減るキッカケになると思ったからです。

で、このブログ主の主張にはほぼ同意なのですが、1点だけ僕なりの意見を言わせて頂きたいと思います。

Q:シンガポールの官僚の給料はGDP成長率に比例しているとのことだが、日本にも人事院勧告で官僚の給料は民間にあわせ上下させている。それゆえ、シンガポールだけ評価するのは中立でないのではないか。

A:人事院勧告は公務員のインセンティブとして機能していない。これは、あくまで人事院勧告は民間の賃金との適切な均衡を確保するという観点が強く、公務員に対するインセンティブ付与という観点から作られた制度ではないので、当然といえば当然ではある。このブログは公務員の読者も多いのだが、人事院勧告がインセンティブになっていると考えている公務員はいないはずだ。


なお、GDP成長率に給料を連動させるやり方だが、もし仮に日本に導入するとしたらシンガポールと全く同じやり方ではまずい。シンガポールは小国の新興都市国家GDP成長率の振れ幅が非常に大きいのに対し、日本は老大国でGDP成長率の振れ幅が小さいからである。シンガポールのやり方をそのままやってもうまく機能しないだろう。

個人的には、GDP成長率にレバレッジをかけるのはどうかと考えている。たとえば、レバレッジを10倍くらいにして、GDPが3%増えたら給料を30%増やす、逆にGDPが3%減ったら給料を30%減らすなんてどうだろうか。(まあ、今後GDPが上がる可能性と下がる可能性のどちらが高いか考えたら、みんな反対するのかな。「GDPが上がる」じゃなくて「GDPを上げる」ためにこのシステムがあるのだが・・・。)

あと、GDP成長率を給料に連動させるというシステムは、東京都や横浜市みたいな大都市の職員向けにも導入できるだろう。例えば「東京都のGDPが20%増えたら都庁職員の給料20%アップ」ってシステムがあったら都庁職員は東京都のGDPを上げようと必死でがんばるはずだ。景気も良くなって税収も増える可能性が高い。


公務員の給与の指標がGDPのみだと、行政側としては経済が活性化されることだけに注力しやすくなります。しかし、それでは本来民間が行わない行政の仕事を疎かにしがちになるのではないでしょうか。例えば都心で公園や緑を増やす活動というのは人々の生活においては結構大事なことだったりしますが、GDPの成長に直結するとは考えにくいです。そうなると、こういう仕事は後回しにされるようになり、それこそお金目的の活動ばかりになるでしょう。


GDPは国家の指標として判断しやすく一つの計りであることは間違いないですが、それのみが判断基準になると非常に危険な方向に進んでいくような気がします。それが今の経済至上主義・拝金主義に繋がっているのだと思います。


それではどうすればいいのか、日々無い脳みそを搾り出して考えてはいるものの、まだ全然妙案が思い浮かびません。
そこは今後の課題としたいと思います。