コピー市場拡大の恐ろしい罠


僕がよく読むブログで、おちゃらけ社会派のちきりんさんのブログがあります。
基本的には彼女の思想は概ね賛同できるのですが、たまに「え?」と思う意見もあります。
今回ご紹介するエントリーでも自分なりに納得のいかなかった内容だったので意見を言いたかったんですが、いつもはてブやコメント欄にコメントを残したりもするのですが、コメント欄が廃止になったのとはてブには書ききれなかったので、自分のブログに書いてトラックバックでもしてみようかというテストです。


『グローバリゼーション ステージ2』
(だいぶ前のエントリで恐縮ですが・・・)

次に裁定取引市場の特徴です。こういう市場では、裁定機会が縮小して最終的に消滅するまで次々に新たな裁定者がでてきます。中国で一個1000円で作ったものを、発注元の欧米・日韓企業が先進国で3000円で売っているとすれば、「じゃあ、オレ達はこれを2000円で直接売ろう」と思う人がでてくるのはごく自然な話です。

ここでもしも欧米・日韓側が最初から2000円を大きく下回る価格で売っていたら、中国側はニセモノを作るインセンティブが得られません。摘発の可能性、没収の可能性、ニセモノ工場だっていろんなリスクを織り込んで商売をしているので、1000円で作ったものを1200円でニセモノとして売る、では商売が成り立たないからです。

いや、1000円で作ったものを1200円で売る、でも商売は成り立つはずです。中国企業というのは、日本側がなんぼで売ろうがそんなのは気にしてないと思うんです。あくまで1000円で作ったものが、それ以上で数多く売れるのであれば、本物がなんぼで売っていようが知ったこっちゃない。リスクを織り込んで商売をしていると言っていますが、そもそもそんなリスクすらも考えてないのが中国企業です。そのとき利益がでればいいんです。摘発されれば、また新たに違うニセモノを作ったらいいんです。少なくとも、僕の知っている中国人はそんな考え方の持ち主でした。

つまり、ニセモノ市場が発生する理由のひとつは、“欧米・日韓の発注企業の鞘抜き額が大きすぎるから”だと言えます。あまりに大きな額を抜こうとするから“一定のリスクをとってその中間価格でニセモノを売る”という商売に経済合理性が発生してしまうのです。

メーカー側は「“あまりに大きな額”なんて抜いてない。正当な開発費分だ!開発の苦労分を価格に上乗せするするのは当然だ!」と言うかもしれませんが、日本における開発者や本社の人件費&諸費用のレベルを前提としての“正当性”なんて、それこそグローバル市場において正当化できません。

いや、「鞘抜き額が大きすぎるから」ではないと思います。簡単にコピーできて、それがある程度の利益を乗っけても売れるからです。

でもって、これは一般メーカー企業をあまりにも軽視しすぎではないでしょうか。開発費とは製造費だけではありません。研究費から設計費、広告費に至る全てがそこにのっかっているのです。ニセモノ、つまりコピー商品とは、それら全てを鞘抜きしてしまうことです。僕は少なからず今は製造業に関わるビジネスをしているため、1つの商品を作り出すコストが製造費以外に膨大にかかっていることはある程度理解しています。

また、メーカー側は毎回売れる商品を作っている訳ではありません。時には失敗作も世に出しています。というか大成功する方が稀ではないでしょうか。そういったリスクも背負っているのです。コピーメーカー側は、失敗作ではなく市場に出回っている実績ある商品をコピーするので、その辺のリスクはないです。


で、本当に恐ろしいのは、コピーでホンモノが売れなくなり、メーカー側がホンモノの商品を作ることを止めてしまうことです。つまりはイノベーションすら起こらなくなり、商品の進化はストップしてしまうのです。オリジナルの商品が高いのはそこで産まれた利益を次の商品開発等に投資する目的もあるのですが、それができなくなるのですね。

ま、ひょっとするとちきりんさんはモノ自体がいらないと言っているので、商品の進化すらももういーんじゃね?って思ってるのかも知れませんが。僕的には進化が止まるのは残念で仕方がないです。今後、ニセモノ大国で、オリジナルのイノベーション商品が頻繁に出てくるようになれば、それはそれで良いことだとは思いますが、まだそのレベルに達するには時間がかかると思います。


ということで、コピー商品の容認には断固として反対なのですが、かといってその流れをいかに阻止するのかは結構難しかったりすると思います。あとは人間か国のモラルに任せるということになるのでしょうか・・・